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米国財務長官としてイエレン氏の代わりに新しくトランプ氏が指名したのが、スコット・ベッセント氏です。
ベッセント氏は財務長官に就任しますが、キー・スクエア・グループというヘッジファンドを運営する投資家でもあります。
過去にはジョージ・ソロスと共にソロス・ファンド・マネジメントで働いていました。彼はポンド危機や日本円安で大儲けしたことで知られています。
そのベッセント氏が大統領選前の11月4日にインタビューで
「金は私の最大のポジションであり、金の長期的な強気相場にいると考えています。」
という発言があり、これが海外の貴金属投資家の間で今話題になっています。
つまり、ゴールドに強気相場を予想しており、彼自身もゴールドを保有しているということです。
一時間ほどのインタビューですが、51分辺りからゴールドについて語っています。
I think we are in a long-term bull market in Gold. I think we're seeing Reserve accumulation by central banks I follow it closely it's my biggest position and even I was surprised the other day when the Central Bank of Poland came out and said that they want to take their gold reserves to 20% and you know.
私は金の長期的な強気相場にいると考えています。
中央銀行による準備金の積み増しが進んでいるのを見ており、それを非常に注視しています。
金は私の最大の ポジションであり、先日、ポーランド中央銀行が金準備を20%に増加させると発表したことに私は驚きました。
ベッセント氏によると金に強気な理由は中央銀行が準備金として、金を大量に保有している点、ポーランド中央銀行が金準備を20%増加させる点について語っています。
1,中央銀行が史上最速で金を積み上げる理由
当ブログをご覧になっている方は既にご存知かと思いますが、非米側の中央銀行は史上最速のペースで金を購入しています。
なぜ、中央銀行が焦って金を購入しているのか?理由は3つ。
米国の財政赤字がどうにもならそうな点。米国による米ドルの兵器化です。インフレです。
米国の債務額は36兆ドルを超え、今もなお債務額は増加しています。
連邦債務は金曜日にさらに130億ドル増加し、36兆480億ドルという過去最高額に達した
この日の過剰支出は実際にはさらにひどく、財務省の現金も210億ドル減少した。つまり、たった1日で340億ドルの赤字である。
当然ですが債務額が増加すれば、債権者に対する利払い費用も高くなります。
インフレを抑える為に5.5%の高金利政策を続けていきましたので、利払い費が急激に上昇しています。
バンク・オブ・アメリカの試算によれば、年内に1.5%利下げが行われた場合でも利払い費は1.2兆ドル程度になると予測していました。
現在は利下げトレンドになっているものの、それでも政策金利は4.75%と依然として高いままです。
しかし、現在0.75%の利下げしか行われていません。
たとえ、これが1.5%利下げだったとしても、1.6兆ドルが1.2兆ドルに減るだけです。
そして、同時に問題なのがインフレです。上記の利払い費は利下げを実施すれば、引き下がるものの、同時にインフレ再燃のリスクがあります。
2022年にインフレ最大9%まで上昇した後、現在は前年比ではCPIが+2.6%と低い数値になっているものの、9月+2.4%から加速しており、高止まり状態にも見えます。
連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として注視している変動の激しい食品やエネルギーを除いたコア指数は予想通り3カ月連続で前月比+0.3%となった。前年比では+3.3%と、やはり予想通り9月と同水準。
このように押すことも引くことも難しくなっているのが米国財政状況です。
一応、イーロン・マスク氏等が政府功率省に任命され、2026年7月4日までに2兆ドルは削減できるとしていますが、支出削減はつまり経済停滞を招く恐れもありますし、現時点では実現可能なのか不透明です。
というのもあって、世界の中央銀行は金を史上最速で積み上げているのです。
→ゴールドが最高値を更新し続ける”本当の理由”とは?今後も上昇する可能性は高いのか?
2,ポーランド中央銀行が金準備を20%に増加させると発表
ベッセント氏が言うようにポーランド中央銀行は金を積み上げると発表しています。
以前の記事でも紹介しましたが、BRICSではないポーランドが金の準備を20%増加させ、イギリスよりも金準備が多くなったと発表したのが話題になりました。
また、ポーランド元財務大臣はポーランドだけでなく、ユーロ圏の国々は新たな金本位制に備えていると発言しています。
ポーランド、ハンガリー、チェコ共和国などのユーロ圏だがユーロではない国々は、新たな金本位制に向けて準備を進めている。
ポーランドの元財務大臣であるコンラッド・ラツコフスキ氏は最近、ヨーロッパの公的な金準備はGDPに対して均等に分配されるべきであり、それが「近い将来、新しい金本位制になるだろう」と主張しました。
世界の主要な中央銀行の多くは、紙幣政策がうまくいかないときに備えて「プランB」を持っています。
このバックアッププランは、ある程度、中央銀行間で調整されています。プランBの最初の種は1970年代に欧州の中央銀行と政治家によってまかれました。
アメリカとその最も従順な従属国だけが、協力を拒んでいます。
このプランBとは、もちろん金のことです。
金は地球上のほぼすべての通貨当局によって所有され、近年、ドルの武器化と貨幣価値の低下に対する対応として、非西洋の中央銀行が記録的な量で金を購入しています(下記のチャート1参照)。国際的な通貨秩序に大きな変化が待ち受けています。
3,ベッセント氏が財務長官で金が大幅下落している理由は?
ベッセント氏が金に強気なのに、なぜ金は大きく下落しているのか?と感じる人もいるかもしれません。
執筆時点で金は一旦回復した後、またしても大きく下落しています。これはベッセント氏指名された直後の動きです。
短期的には
・イスラエルとヒズボラが休戦合意間近の報道
・金先物とオプションの満期日(多くの場合、暴落につながる)
・スコット・ベッセント氏が財務長官に指名された
この3つが主因だというのが、貴金属投資家の間のコンセンサスになっています。私が参考にさせて頂いている、ジェシー氏も同じような見解です。
「金は今日も下落したが、トランプ大統領がスコット・ベセント氏を財務長官に指名したこと、イスラエルとヒズボラが休戦に近づいていること、金先物とオプションの満期日(多くの場合、暴落につながる)など、さまざまな要因が重なったためだ。」
https://x.com/TheBubbleBubble/status/1861174696949227862
スコット・ベッセント氏は金に強気なら、金はなぜ下落するのか?
理由の1つはベッセント氏が就任したというよりもイエレン氏が退任した事による市場の期待によるものだと思われます。
ベッセント氏自身、トランプ氏が指名したというのもあって、トランプ氏の政策に沿った経済政策が期待されているので、「経済は強くなる」と市場の期待が強いです。
- 財政赤字の削減:2028年までに財政赤字を国内総生産(GDP)の3%まで削減を目指す。
- GDP成長率の引き上げ:規制緩和を通じて、GDP成長率を年率3%に押し上げる。
- エネルギー生産の増加:日量300万バレルの原油またはその相当物のエネルギー生産を増やす。
みればわかりますが、減税に関してもトランプ氏の経済政策を支持していますし、かなりトランプ氏に近い政策が実施されると思われます。
トランプ氏が当選した直後も、市場の期待により金は下落したので、同じような政策が期待されるベッセント氏が指名された直後に金が下落してもおかしくは無いです。
→トランプ大統領選勝利で金、銀価格が下落した理由は?貴金属投資家の今後の見通しは?
またベッセント氏が指名というのもありますが、過去4年間経済が酷かったのでイエレン氏が退任したことも大きいです。
そして、11月4日にインタビューで語られた
「金は私の最大のポジションであり、金の長期的な強気相場にいると考えています。」
という点はロイターやBloombergなどでは報道されていません。
つまり、殆どの市場参加者はベッセント氏が金に強気なのは知らず、経済政策面のみ焦点を当てているので金は下落しているということです。
5,ベッセント氏はジム・ロジャーズ氏の部下として働いていた
ベッセント氏が金に強気なのもそうですが、興味深いのはソロス氏の部下として働いていたのは有名ですがジム・ロジャーズ氏の元でも働いていた点です。
ジム・ロジャーズ氏といえば、貴金属投資家であれば誰でも知っていると思いますが、10年以上前から銀に強気な投資家です。
→ジム・ロジャーズ「2024年は金より銀が良い」なぜ今銀を推しているのか?
ベッセント氏はインタビューで以下のように語っています。
ジム・ロジャーズというアナリストが、スプレッドシートを作成し、ランチを作り、トイレを掃除し、ソファで寝ることができる仕事を募集しているという通知がありました。
私はそれに応募しました。それは私が好きなすべてのことが詰まっていたので、非常にジャーナリストのような仕事でした。
ジムはいつも「リサーチ、リサーチ、リサーチ」と言っていました。彼が探していたのは、主要な世代的変化だったのです。
物語を作り、リサーチをして、また、定量的な側面にも魅力を感じました。そこでスプレッドシートを使う方法を学びましたが、それは素晴らしい経験でした。
ジム・ロジャーズと共に過ごした日々が私にとって非常に重要な学びの時期となり、投資に対する深い洞察を得ることができました。
私は資産運用業界でさらに多くの経験を積み、さまざまな戦略やアプローチを試しながら成長していきました。
非常に興味深いです。
【結論】ベッセント氏で金は今後どうなるのか?
ベッセント氏が金に強気だからといってただちに金が上昇するというわけではありませんが、金に反対する人物が財務長官になるよりは、金にとってプラス材料でしょう。
また、彼は6月のイベントで
「私たちは、ある種の大規模な世界経済の再編を行わなければならないだろう」
「私はそれに参加したいと思っています。私はこのことを研究してきました。」
と語っています。
ジュディ・シェルトン氏が最近語った金担保米国債や
ジュディ・シェルトン氏 50年満期のゴールド担保国債について語る🔥🔥
「私が提案するのは、トランプ大統領がアメリカ合衆国財務省に対して、2026年7月4日から50年満期のゴールド担保国債を発行するように認めることです。この日は私たちの国にとって重要な日になるでしょう。
そして、この国債は、2076年7月4日、建国300周年の日に満期を迎えます。この国債は、保有者が選択すれば金に転換できるようにすべきだと考えています。
まず第一に、私たちは26,100万オンスの金をその債券の担保として利用します。
それは53年間、ほとんど手をつけられていません。
現在、その金は帳簿上で110億ドルとされていますが、すでに7000億ドルの利益が生まれています。それを市場価値で評価したいのであれば、その利益を取り入れるべきです。
しかし、それだけではなく、この金に転換可能な米ドルの債券を通じて、私たちの通貨を金のように信頼できるものとして復活させ、通貨の健全性を回復することが目標です。」
Proposal for a 50-year Treasury bond convertible into gold issued at the initiative of President Trump on July 4, 2026. pic.twitter.com/vXVy0SnIq6
— Judy Shelton (@judyshel) November 22, 2024
シンシア・ルミス氏が語った金を再評価し、ビットコインを購入するという動きと何か関係があるのでしょうか。
→米国上院議員,FRBの金を再評価&100万ビットコイン購入する法案を提出した意図は?
米国の債務が通常の方法では返済不可能という点からすると、かつてある日突然金本位制が(一時的に)放棄されたように、ある日突然金本位制のような金融システムが提唱される可能性は0では無い気がします。
可能性は低いとはいえ、金に理解があるベッセント氏が就任したことで可能性は上昇したと思います。
いずれにせよ、金は米国だけがコントロールできる範疇を超えており、今後も米国の信頼が落ちるたび金は上昇していくでしょう。
→中国,サウジアラビアで米ドル建て債券が20倍の需要!「米ドル覇権」は終了なのか?
→ゴールドマン・サックス「金は1オンス3,000ドル目標」,金は2年ぶり売られ過ぎ水準に。15の金銀関連ニュース【11月第3週】
→トランプ大統領選勝利で金、銀価格が下落した理由は?貴金属投資家の今後の見通しは?
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