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ロシアが金の購入を期間限定で7倍増加すると発表したことが、貴金属投資家の間で話題になっています。
ではなぜこのタイミングでロシアは金の購入量を増加するのか?考察してきます。
1,ロシアは金の購入量を期間限定で7倍に増やすと発表
ロシアが通常の量よりも金を7倍の量購入すると発表しました。そして気になるのが9月4日~10月6日までの間だけと言う点です。
Sourcehttps://t.co/gJBPa4WKoL pic.twitter.com/vO5wqUdSqd
— Silver hand (@Anthony6355) September 5, 2024
2024年8月7日から9月5日までの間には、24.65億ルーブルを外国通貨と金の購入に割り当てる計画があり、日々の購入額は11.2億ルーブル
それが9月6日から10月4日までの間は1日辺り、82億ルーブルに増やすので約7倍もの増加です。
金の量にすると約21トン前後という量です。
しかし気になるのはタイミングです。
知っての通り、金の価格はドル建てでも最高値を更新し続けており、2,500ドル前後。過去の価格からすれば決して安い価格ではありません。
そして現在は大手投資機関の金のショートポジションは、過去最高レベルに増加しているような状況です。
https://x.com/InProved_Metals/status/1829806995324497998
ショートポジションを保有しているということは、大手投資機関は金の価格下落に賭けているということになります。
このタイミングでロシアが大量に金を購入すると発表するのは興味深いですね。
金の価格が下落すればするほど、ロシアは安く金を購入出来ることになりますが、果たしてショートポジションは続くのでしょうか?
金の価格は上がった方がロシア側に金現物が渡る量が少なく済みますが、かと言って金の価格が上がるのは相対的にドルの価値が下がるとも言えます。
そして、金のショートポジションを抱えている、米国の大手投資機関は損失を抱えることになります。
もう一点は購入する期間です。
7倍に増加させるとしながらも、現在のところ9月6日から10月4日までの間だけ増加させるとしています。
そして、この期間がロシア カザンで開催されるBRICSサミットの直前という点が貴金属投資家の間で様々な憶測を呼んでいるようです。
2,10月22日~24日に開催のBRICSサミットで、金40%ペッグのUNIT発表か?
ロシアが金購入を増やすことを発表した後、間もなくBRICSサミットの内容についてニュースが流れました。
BRICSビジネスカウンシルの金融サービスタスクフォースの責任者であるアンドレイ・ミハイリシン氏がTASSに語った。
ミハイリシン氏は「小売業およびB2Bセグメント向けのいくつかの解決策を秋のBRICSサミットに向けて準備しています」と、「デジタルファイナンス:新たな経済の現実」フォーラムの傍らで述べた。
また、共通の単位(Unit)、BRICSデジタル通貨による国際決済プラットフォーム(Bridge)、決済システム(Pay)、決済預託所(Clear)、保険システム(Insurance)、BRICS評価連盟などのプロジェクトリストが決定されたことも確認した。
”Unit”は金の価値の40%と、BRICS諸国の国別通貨のバスケットの60%に基づいて価値が決定されます。
ソースはコチラ↓
https://x.com/DavidLe76335983/status/1832223375600529814
特に話題になっているのが共通の計算単位”UNIT"です。
注意したいのがUNIT自体は通貨ではなく、共通の計算単位という点です。
ドル資産の場合、米国等の意向に従わなければ勝手に資産を凍結されたり、金融取引ができなくなるわけです。
現にロシアはドル資産が凍結され、中国に関してもロシアに経済制裁に加わらないとして、制裁対象と取引すれば米国外の企業でも罰せられるという状況です。
(米ドルの「兵器化」)
ロシアの人民元決済が停滞 米国の「二次制裁」が効果発揮 中露「物々交換」案も浮上
https://www.sankei.com/article/20240825-UVYEYXFOUVOGHEZFJHWEMOZTKE/
また、米国は経済を支える為にドルを大量に印刷してます。
世界中の取引で利用される基軸通貨が米国の一国の都合でドルが増刷され、ドルの価値が希薄し世界中でインフレが進んでいくというわけです。
こうした既存の金融システムにおける政治的影響を排除し、公正で安定した取引基盤を提供する共通単位が”UNIT"です。
そして、”UNIT"の基盤になるのが金(40%)とBRICS+諸国の通貨(60%)です。
UNITの価値の40%が金によって支えられるため、実質的にBRICS諸国の通貨の価値も部分的に金と連動することになります。
40%が金の裏付けされるとどうなるか?Stefan Demetzさんが考察によると↓
金の安定した価値を基盤にした取引が可能となり、特にコモディティ(原材料や商品)の価格付けが金価格を基準に行われるようになることが期待されます。
現在、コモディティ取引の80%が米ドルで行われていますが、THE UNITが普及すると、これが10%以下に減少する可能性があります。
これにより、米ドルの国際取引における役割が大幅に縮小するでしょう。
THE UNITに移行することで、多くの国が米ドルやその他の西側準備通貨を手放し、代わりに金やUNITと連動する通貨を保持するようになります。
取引の基盤がドルではなく金がペッグされたUNITを裏付けた通貨に移行することより、コモディティ(原材料や商品)の価格がより安定するということです。
コモディティだけでなく、通貨に関してもドルを物差しに価値を図ってますよね。
最近では円安、円高と騒がれますが、やはり我々の通貨円もドルで価値を計っています。(もちろん円以外の通貨も)
債券やら株式、不動産など全ての資産は辿っていけば、全てドルに辿りつくわけです。
これがUNITの使用にシフトされた場合、わざわざドルで価値を見る必要がなくなります。
いまだにBRICSが烏合の衆と言っているような人も見かけますが、世界のコモディティを産出しているのはほとんどBRICS側です。
日本においても原油輸入先はBRICSであるUAE、サウジアラビアに依存してますし
多くの家電、食料品、衣類など中国から安く購入できているから豊かな生活ができているわけです。
例えば日本人が大好きなiPhoneに関しても、メーカーこそ米国ですが中国のFoxconnやPegatronなどの会社によって、組み立ているから安く購入できるということです。
もしこれがアメリカや日本で全て製造されていた場合、さらに高価格になる可能性があります。
BRICS側から取引通貨としてUNITが裏付けられた通貨を指定されれば、従わざるをえません。
とはいえ、中長期的に見れば日本にとっても米国依存から抜け出す機会になり有益ではあります。
なぜBRICSサミット直前にロシアは金を爆買いするのか?
話が逸れましたが、BRICSサミットで金の裏付けされるUNITを発表するのであれば、サミット直前にロシアが金の購入量を増やすのはあり得る話かと思います。
これは私の妄想ですが、金裏付けのUNITが利用されるのであれば、BRICS参加するために一定量の金の保有が条件なのではないか?と考察してます。
一定量というのが対GDP比なのか、中央銀行の準備高比なのか規定があるのか分かりません。
ただ、もしBRICS参加に一定以上の金の保有が条件であれば、ここ最近非欧米の中央銀行で金の爆買いされているのも納得いきます。
世界の中央銀行は史上最速のペースで金を積み上げています。
https://x.com/Barchart/status/1825724719368196252
また、国際準備金に占める割合ですが金がユーロを超えてました。
https://finance.yahoo.com/news/gold-surpasses-euro-challenges-dollar-160000516.html
BRICS参加に一定以上の金が必要で、UNIT発表直前でその金の量に達していなかったので急激に購入量を増加させた可能性はあるかもしれません。
他に西側の金価格操作に対してプレッシャーを与える、他のBRICS参加国に対してこのUNITが本気であることを知らしめるなどの説もあります。
3,BRICSでUNITの3つの懸念点とは?
ではすぐに金価格が上がるか?というと少し懸念点もあります。
まずUNITが発表されたからと言って、すぐにシステムが稼働するか?は現時点では不明という点です。
以前5月にもUNITに関する記事があったのですが、そこでは”2025年稼働を目標”とありましたので、すぐに金価格が上昇するわけではないかもしれません。
BRICS+ ビジネス評議会によって設立された金融サービスおよび投資作業部会ですでに議論されており、早ければ 2025 年に正式な BRICS+ 政策となることが本格化しています。
もう一点はたとえ稼働したとしても、システムの普及に時間がかかる可能性があるという点です。(特に西側諸国)
BRICS側ではすぐに利用されると思われますが、西側諸国が素直に利用するか?というと疑問です。
個人的な予想ですが、大恐慌やドルのハイパーインフレ等、ドルベースの金融システムに致命的な欠陥が表面化し、UNITに頼らざるを得ない状況にならなければ西側諸国は利用しないのではないか?と考察してます。
経済に関心がある人は多少なりとも、米国側の経済やドルベースの金融システムの存続に懐疑的な面もあると思います。
ただ、メインメディアしか見ていないような一般人からすると「なんで米国経済は強いのに、わざわざ新興国の集まりの通貨を使う必要があるんだ?」と理解を得られないのではないかと感じてます。
最後の懸念点は去年の8月にもBRICSサミットがあったのですが、当時もBRICSの発表があるのではないか?という噂があった点です。
ただ、当時は今よりBRICS通貨に関する情報はほとんど出ておらず、発表される可能性に関しては現在の方が高いと思われます。
とはいえ肩透かしの可能性も0ではないのは、頭に入れておいた方が良いですね。
【まとめ】BRICS通貨やUNITがどうなろうとも、金価格は上がる?
個人的には今回のUNITが発表されたとしても、それ一気に金融システムがひっくり返るとは思えません。
BRICS側もまだドル資産を多く持っており、ドル取引も多いので一気にひっくり返そうとしているわけではないと思います。
このような発表でもしドルが一撃で破壊されるようなことがあれば、それはそれでBRICS側嫌悪の口実にもなります。
今回は西側ではなくBRICS側の視点で金を見ていきました。ただ、やはり米ドルが依存度が減ってきているとはいえまだまだ世界経済は米ドルベースです。
BRICS側だけではなく、米国側の経済、金融面からも金が価格はどうなっていくか?両面から見ていく必要があります。
知っての通り、西側諸国はインフレ&景気後退懸念があり、正直金が上がらない理由を見つける方が難しいですが・・・
→過去の金融危機で金、銀も大暴落した?S&P500と下落率を比較した結果・・・
どのタイミングで景気後退が訪れるか?はいろいろ意見が別れてますが、一時的に金が暴落しようと、その後金銀価格は上昇してくだろうという意見は増えつつあるように見えます。
→デビッド・ハンター「2025年半ばに株式は80%下落し、20兆ドル規模の紙幣印刷でインフレ率は25%を超えるだろう」
→ジム・ロジャーズ「2024年は金より銀が良い」なぜ今銀を推しているのか?
→ロバート・キヨサキ「株式、債券、金、銀、BTCの価格の史上最大の暴落が来る。」
→【2024年版】金価格はどうなる?世界の10大銀行の予想を比較
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