トランプ氏「脱ドル化で関税で制裁」5つの思惑とは?トリフィンのジレンマで米ドルは終了なのか?

報道によるとトランプ氏が大統領になった場合「脱ドル化の国々に100%の輸入関税の制裁を課す」という内容です。

普通に考えれば、このような強い発言をすることでより、ドルが忌避の進む事は、トランプ氏も理解しているはずです。

実際、Xで反応を見ても「BRICS側(非米)が今更ドルに戻るはずは無いだろう」というものが多いです。

では一体なぜ、このタイミングであえてこのような発言をしたのか?考察していきます。

1,脱ドル化が進んでいるのを広める意図

BRICS側で脱ドル下が進んでいるのは事実です。どの程度のペースで進んでいるか?については賛否別れてますが。

先日ですが、BRICSサミットにて金40%裏付けする共通通貨が発表されるという報道がありました。

ロシアが金の購入を7倍に増加!BRICSサミットで金40%裏付けの新通貨を発表か?

しかし、だからといって米国大統領候補という立場で

「世界で脱ドルが進んでいる!」「米国はドルを刷りすぎたのでBRICS通貨に仲間に入れてもらおう」

と発言するのは現在基軸通貨国としては難しいでしょう。

もし、このような発言があれば通貨戦争に負けたこと認めることにもなり、この発言自体で更にドルが弱くなる可能性もあります。

当然、民主党やメディアからは「米国ドルを弱くするきっかけ」を作ったと批判されます。

経済を追いかけている人であれば、米国経済が限界に近づいてることに気がついてますが、ほとんどの人はそうではありません。

「脱ドル化の国々に100%の輸入関税の制裁を課す」

という発言であれば、現在の強い米国を維持するというスタンスを取りながらも、あまり経済を追っていない人に対し、”世界的に脱ドルが進んでいる”ということを暗に知らしめることになります。

このような強烈な発言があれば、当然メディアに取り上げられ多くの人が目にすることになります。現に日本のYahooニュースやBloombergなどでも報道されてます。

2,トランプ氏は経済危機、米ドルの限界が迫っていることを認識している

米国の債務が35兆ドルを超え、利払いだけで1.2兆ドルにも達し、もはや数学的に返済不可能といわれています。

https://Twitter.com/Anthony6355/status/1824642309511843875

当然ですが私らのような一般庶民でも少し調べればわかるくらいですので、トランプ氏も理解しています。

少し前にイーロン・マスクはこの債務状況に対して、「米国は破産しつつある」と発言もしています。

イーロン・マスク「米国は破産しつつある」ドルの価値は過去4年間で25%の価値が減少しているのは本当か?

そして、トランプ氏は大統領再選の場合、政府の効率化を進める委員会を設立し、イーロン・マスク氏をトップに起用する方針表明しています。イーロン・マスク氏が把握していてトランプ氏が把握していないなんて事は十中八九ないです。

https://jp.reuters.com/world/us/N5CYD43POBN7TOZHVQRNW7PAAM-2024-09-09/

また、以下のように大恐慌が迫っていると何度も発言してます。

1929年のような大恐慌と世界大戦が近づいていると述べ、「我が国にとってこれまでで最も危険な時期だ」と語った。

当たり前ですが、政府の効率化委員会にイーロン・マスク氏を指名するくらいですから、両者の経済知識や考えは共有しているといえるでしょう。

3,トランプは一貫して「米国に産業と雇用を取り戻す」と発言している

具体的には、トランプ氏がアメリカでの製造を強化し、アメリカ人労働者を優先する政策を推進や、外国での工場建設を認めず、アメリカで製品を作って雇用を生み出すという発言をなんども繰り返しています。

「私が望んでいるのは、外国人労働者ではなく、アメリカ人の労働者を守る未来だ。
外国の利益よりもアメリカの夢を優先する未来だ。そして、アメリカ人の賃金が上がり、アメリカの産業が強化され、国の誇りが高まり、この国の尊厳が守られる未来だ。」

下のグラフは赤が移民が職に就いた数で、8月だけで63万5千人の移民(合法・不法問わず)が職を得ました。一方、青のグラフはネイティブアメリカンの雇用人数で132万5千人が職を失っています。

トランプ政権で不法移民を厳しく取り締まっていた時期ですら、ジワジワと企業が安い労働を求めて、移民の職が増えています。

そして、バイデン政権になってからは更に急激に増加し、ネイティブアメリカンの雇用人数は増えるどころか下落してます。

バイデン氏が2020年の選挙で「もう1フィートたりとも壁は作らない」

とし、数々の不法移民の救済措置を発令し、”不法”移民を保護しているのでこのように移民が増え、元々住んでいたアメリカ人の雇用が奪われている状況です。

不法移民は、合法的な労働者よりも低賃金で働くことが多く、ドル高なのも起因して雇用を求めて米国に集結します。

日本でも「米国で寿司職人をやれば、年収2,000万円稼げる」など話題になりました。

「日本で数年修行→アメリカで寿司職人になり年収2千万円」は本当だった…職人争奪戦

https://biz-journal.jp/company/post_353573.html

同じ労働量であれば、賃金が高い地域で職に就きたいと思うのは当然です。

このように通貨価値が高いと、それよりも安い通貨の国から労働者が集まり、現地の人よりも安い賃金で雇うことが出来るので企業も積極的に採用しようとします。

そうなると、ネイティブの雇用が失われていき、移民がどんどん増えていってしまうというわけです。

4,基軸通貨国は中間層に不利?

基軸通貨であるため、非米側であろうと米国側であろうと、ほとんどの国際貿易や投資で広く使用されています。

つまり、常に世界中でドルの需要が高まります。

世界中の中央銀行に関しても、自国の外貨準備として貨米ドルを通貨を大量に保有しています。

以下は国際準備金に占める割合ですが、第1位がドル、第2位が金、第3位がユーロです。

https://finance.yahoo.com/news/gold-surpasses-euro-challenges-dollar-160000516.html

ドルが強いので世界中から米国に資金が集まり経済も強くなる一方で、ドルが強くなってしまう為に、国内では安い移民が雇われやすくなり、安い労働力を求め生産工場などは海外に建てられ結果的に米国人の雇用が失われてしまうというわけです。

また、ドルが強くなると米国の輸出品が外国市場で高くなり、競争力が低下します。

現実問題、中国は低コストで米国と同等以上の製品が作れるほど成長しており、家電やEV中国の追い上げは凄まじいです。

スマートフォンの2023年世界シェア
1位Apple
2位サムスン(韓国)
あとはいずれも中国

投資が集まるおかげで、優秀な人材、莫大な資金が集まったというのもあり、マグニフィセント・セブンと言われるような企業が生まれたので賛否はあると思います。

しかし、逆に言えばほとんどの国が過剰に米国の経済に依存しすぎている状態です。

「アメリカがくしゃみをしたら日本は風邪をひく」と言われてますが、いま米国がくしゃみをすれば、日本は肺炎になるでしょう。

そして、米国は世界中から資金が集まるのもあって、対外純資産はダントツの赤字で、米国も外国の投資家や政府が経済依存しているというとも言えます。

対外純資産ランキング

このように基軸通貨国は、貿易の為その通貨を世界中が保有するために、常に貿易赤字を出し続ける必要があります。

米国がドルを供給しなければ世界中でドル不足が生じ、国際貿易や金融取引が滞るリスクがあります。

そしてドルを供給する手段として、アメリカは財政赤字の拡大や金融緩和(ドルの印刷)を行いますが、これが過度に行われるとインフレが加速します。

実際コロナショック後に大量に通貨を発行したことで、インフレ率は最大9%まで上昇してます。

財政赤字に関しても米国債務は35兆ドルを超え、利払いだけでも1.2兆ドルを超えてます。

 

これに対しイーロン・マスクは何度も「米国は破産寸前だ」とポストしています。

イーロン・マスク「米国は破産しつつある」ドルの価値は過去4年間で25%の価値が減少しているのは本当か?

このように基軸通貨国が世界に通貨を発行しなければ国際流動性が不足し、世界経済の成長を阻害してしまう。

一方でドルを供給すると米国の財政赤字が膨らみ、インフレが加速してしまうという矛盾を抱えている状況です。

このような状況を「トリフィンのジレンマ」と言います。

5,”トリフィンのジレンマ”とトランプ経済政策の矛盾

現在米国はこのトリフィンのジレンマに直面しているわけですが、資産家以外の一般層は経済的に苦しむことになります。

インフレを抑える為に金利を引き上げれば、借入コストが上昇し、住宅ローンやその他の借入が高くなり、企業投資も減少し雇用も減少します。

逆にインフレを放置すれば、物価が上昇し購買力が減少します。

では資産家の場合はどうでしょうか?

インフレの場合は株価や不動産価格、金銀などコモディティなど資産価値がどんどん上昇していくので、資産家は更に資産が増えていくことになります。

以下のグラフは上位0.1%(13万2,000世帯)の純資産の合計と、下位50%(6,600万世帯)の純資産です。

富の格差はますます極端に広がり続けています。

逆に金利高の場合は資産価値は下がりやすいですが、不動産や金融業など保有しているような資産家は金利分の利益(一般層が支払う金利)が得られるので、経済的ダメージは一般層より多くありません。

つまり、基軸通貨国は金融機関や不動産業、マグニフィセント・セブンを代表する多国籍企業にとってはメリットでありながら、中間層など製造業には不利な面が強いです。

しかし、トランプ氏は基軸通貨を守りたいとしながら、製造業を取り戻し中間層を支援すると何度もアピールしています。

一見するとかなり矛盾しているように見えます。果たしてトランプ氏の思惑はなんでしょうか?

トランプ氏が「脱ドル化の国々に100%の輸入関税の制裁を課す」というような極端な発言をすればするほど、メディアはトランプ氏を叩き、本当のことを語ってしまうのは興味深いですね。

また、トランプ氏はこのようなことを自身のSNSに投稿して話題になってます。

「長い間、一般のアメリカ人は大銀行や金融エリートによって搾取されてきました。今こそ、私たちが一緒に立ち上がる時です。」

ほぼ同じようなタイミングでBRICS側の共通通貨が発表される点も興味深いですね。

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いずれにしても、ハリス氏トランプ氏どちらでも金と銀にはプラス材料なのは間違いないです。

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