債権王として知られ、ジェフリー・ガンドラック氏が金価格が高騰し続ける理由について以下のように述べていました。
「(政府による)終わりの無い債務依存システムに危機感を募らせ、人々を金やビットコインに駆り立てている」
ガンドラック氏は、ダブルライン・キャピタル(DoubleLine Capital)の創設者兼CEOであり、この会社は特に債券投資に強みを持つヘッジファンドです。
1,インフレよりも景気後退の雰囲気の方が強い?
まずガンドラック氏によると、現在はインフレよりも景気後退の雰囲気が強いと語ってます。
インフレ的な雰囲気よりも景気後退の雰囲気の方が強い。
アメリカ経済には問題の兆候が現れており、クレジットカードの延滞率の上昇や小売売上高の軟調なデータなどが、景気後退の可能性がインフレの再燃リスクよりも差し迫っている。
このインタビューがあったのは6月でしたので、先日あった米雇用統計81万人修正される以前ですら、ガンドラック氏は景気後退を予測していることになります。
ではガンドラック氏が語っているように、データは軟調で景気後退を示しているのか?
バンク・オブ・アメリカのクレジットカード延滞率のデータです。
https://x.com/jessefelder/status/1827492481325494464
縦の薄い灰色は景気後退期間を示しています。現在クレジットカードの11%は90日以上延滞している状況。
2008年のリーマン・ショックには及ばないものの、コロナショック時の延滞率は超えています。
もはや既に景気後退に突入しているのではないか?という反応も多々見受けられます。
少し前までは「クレジットカードの利用率が高いのは、むしろ経済が強いからだ」
という論調も見受けられましたが、チャートを見ればわかる通り、景気後退時に生活が苦しくなり、クレジットカードに頼らざるを得ない→延滞率が急上昇しているというのが示唆されています。
延滞率だけでなく、クレジットカード負債額自体も1兆1400億ドルを超え、これは過去最高を記録しています。
NEW - Credit card debt in America reached new high of $1.14 trillion pic.twitter.com/IrToEcjVxt
— Insider Paper (@TheInsiderPaper) August 8, 2024
そしてクレジットカード金利に関しても20%を超えており、これも過去最高です。経済が強いのに関わらず、わざわざ金利が高いクレジットカードを使いまくっているのは不思議ですね。
https://x.com/GameofTrades_
アメリカ人の半数以上が緊急資金を持っておらず、そのうちの40%は1万ドル未満しかないという記事も少し前に話題になりました。
最近の調査によると、アメリカの成人の56%が予期しない1,000ドルの費用を賄うための十分な貯蓄がないことが明らかになりました。この調査は、1,030人の参加者を対象に行われました。これらの人々のうち、21%はクレジットカードを使用して借金に頼ると答え、16%は他の支出を大幅に削減して財政的なギャップを埋めると述べました。さらに、10%は家族や友人からの支援を求め、4%は個人ローンを利用し、5%は代替手段を検討するということです。
https://www.nerdwallet.com/article/banking/data-2023-savings-report
そして、米国の小売上高に関してですが、過去9ヶ月のうち7回が下方修正されているというデータがあります。
データの下方修正が当たり前になっています:
アメリカの小売売上高データは、過去9ヶ月のうち7回も下方修正されています。
今年だけで、4ヶ月分の小売売上高データが0.2%〜0.3%引き下げられました。
6月の小売売上高も0.2ポイント下方修正されています。
最初のデータでは、経済が順調で軟着陸に向かっているように見えます。
しかし、次の月にデータが修正され、その時にはみんなの注目が新しいデータに移っているという状況です。
Downward data revisions are the new normal:
— The Kobeissi Letter (@KobeissiLetter) August 23, 2024
US retail sales have been revised down in the last 7 out of 9 months.
This year alone, 4 months of retail sales data have been adjusted down by 0.2%-0.3%.
In June, retail sales were revised down by 0.2 percentage points.
First, the… pic.twitter.com/JudeNdONKz
これらのデータを鑑みるとガンドラック氏が言っているように、インフレよりも景気後退の雰囲気の方が確かにそのとおりに見えます。
しかし、景気後退が発生した場合は金や銀なども株などと一緒に暴落していきます。
以下はコロナショック時の金価格のチャートですが、市場暴落時には金や銀も同時に下落してます。
一般層には「金は危険回避の安全資産」とされてますが、過去の金融危機時は大抵の場合、貴金属も下落していきます。
というのも、市場参加者は”金だけ”を保有しているわけではなく、貴金属と同時に株式などのリスク資産も保有しています。
そんなときに株式などレバレッジ保有している資産が暴落した場合に、マージンコールが発生しおその支払に持っている資産を売却する必要が出てくるからです。
(マージンコールとは証券の価値が下がり、証券会社から追加の担保(現金)を求められる)
それに関しては以下の記事で書いているので見ていってほしいです。
→過去の金融危機で金、銀も大暴落した?S&P500と下落率を比較した結果・・・
景気後退が来るなら金価格は下がるので、なぜ今金なのか?
ガンドラック氏は世界的同時に政府債務が膨れ上がっている状況が、投資家に対して危機感を募らせ金が買われていると語ってます。
ガンドラック氏は金の価格上昇に次のように述べています。
「(金の価格が上昇しているのは)先進国の政府は完全に制御不能になっているという認識が高まっているだけだと思います。」
2,終わりの無い債務依存システムとは?
当ブログではもはやなんども説明しているので、耳タコですが重要なので何度でも書きます。
米国債務のGDP比現在は120%を超えてます。これは第2次世界大戦よりも更に多いです。
ほとんどの人はリーマン・ショック等の金融危機は勝手に収まったと思い込んでますが、金融危機が発生するたびに米国債権を大量発行して表面的に問題を解決しているにすぎません。
言うなれば、借金まみれのおじさんが借金を返す為に、更に借金を積み重ねている状態です。
借金が膨れ上がっていてもGDPが増加していけば、大きな問題にはなりにくいです。
借金まみれのおじさんが頑張って給料(GDP)が徐々に上昇していくのであれば、市場は「おじさん頑張っているから、借金も返済されるだろう」と期待するからです。
しかし、おじさんの給料(GDP)以上に借金が増えていく場合、この政府債務対GDP比が増えていくというわけです。
そして、これは米国に限らずほとんどの国で債務が膨れ上がっている状態です。
ロンドン(CNN) 各国政府は前例のない91兆ドル(約1京4700兆円)の負債を抱えている。これは世界経済にほぼ匹敵する規模で、最終的には国民に甚大な負担を強いることになる。
債務負担は新型コロナのパンデミック(世界的大流行)のコストもあって膨れ上がり、米国を含む裕福な経済圏でさえ生活水準に対する脅威は増している。
もし、あなたが金利収入を得る為にお金を貸し出すとします。国債を購入とは、政府にお金を貸しているということです。
将来給料が上がりそうなおじさんAさんと、既に借金まみれでいつも遅刻するおじさんB同じ5%の金利であれば、どちらにお金を貸したいか?と言ったら100人中100人がおじさんAに貸し出します。
しかし、おじさんAもBもCもDも借金まみれで、今後返済能力があるか怪しい場合は?
金利以上にリスクの方が大きいと考えれば、投資家は誰に貸し出すのも止めて現金保有した方が良いだろうと考えます。
現金保有する問題点とは?
しかし、今現金保有するのは問題があります。インフレです。
インフレとは物価が上昇することです。物価が上昇するということは、通貨の価値が下がっているということです。
ではなぜインフレが起きてしまうのか?要因を1つに絞るのは難しいですが、大きい要因が通貨流通量の増大です。
例えばパンデミック時は政府による救済として、大量の政府債務が発行され、給付金や支援金など大量の通貨が流入しました。
以下は米国M2マネーです。M2マネーとは現金(紙幣と硬貨)預金、貯蓄預金、短期金融商品等通貨供給量の指標の一つです。
パンデミックショックにより、大量の通貨がばらまかれたことによってM2マネーも急激に増加しているのが分かります。
2023年からインフレ対策としてFRBがQT(量的引き締め)を開始したことで、M2マネーも減少しています。
そして、米国インフレ率です。M2マネーが急激に増加した後、少しのタイムラグを得てインフレ率が最大9%まで急上昇しています。
そして、M2マネーが減少し始めるとインフレ率も低下してきています。低下してきているとはいえ、未だ2.9%でまだインフレは高い状態です。
もし、今の状態でFRBが金利引下げM2マネーが再上昇する場合、インフレ率も再加速することが懸念されます。
そして以下は世界のM2マネーです。
世界のM2マネーサプライが過去最高を記録!
https://Twitter.com/RadarHits/status/1819771104954650959
もし、現時点でもM2マネーは増加し始めているのに、今後景気後退が発生すれば過去の金融危機のように政府は債務発行して問題を解決するしかありません。
しかし、そうなれば今度はインフレが再度加速する懸念があります。
インフレが加速しなかったとしても、一時的市場は安定しますが債務は更に積み重なっていくことになります。
まさにガンドラック氏のいう「終わりの無い債務依存システム」の問題が表面化しつつあります。
債権も現金も問題なら金というわけです。
世界の中央銀行はなんとなく金の石を買っているわけではないということですね。
世界の中央銀行は史上最速のペースで金を積み上げている🚨
https://Twitter.com/Barchart/status/1825724719368196252
【まとめ】中~長期的には金価格上昇だが、短期的には金は下落する?
世界の債務、インフレ問題が解決しない限り金を含む、貴金属は中~長期的には上がり続けるというのが貴金属投資家の中では主流意見です。
ただ、短期的には景気後退が早期に発生し、金や銀はすぐに下落するという方や、2024年までは上昇し続け、2025年あたりから景気後退で一度暴落するという方もいます。
→ロバート・キヨサキ「株式、債券、金、銀、BTCの価格の史上最大の暴落が来る。」
→デビッド・ハンター「バブル崩壊後に銀は500ドル、金は20,000ドルに到達する」と述べる。
短期的な上昇と下落時期に関してはいろいろ意見がありますが果たして誰が正しいでしょうか?
→ハリス副大統領の経済政策でインフレ加速?結局、金価格は爆上げするのか?
→イーロン・マスク「米国は破産しつつある」ドルの価値は過去4年間で25%の価値が減少しているのは本当か?
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