先日、イーロン・マスク氏が「アメリカは破産しつつある」「ドルの価値の崩壊はどこまで進んでいるのでしょうか?」と言ったことをXにポストし話題になりました。
果たしてただの”イーロン節”なのか、根拠があるのか見ていこうと思います。
1,「アメリカは破産しつつある」とポスト
経緯としては最初にShibetoshi Nakamotoというシバイヌコインのアカウントが以下のようにポストしました。
Shibetoshi Nakamoto
「私が支払う所得税の76%が、過去の政府の無能さを象徴する、政府債務の利息に使われるのは嬉しいことだ。」
i am glad 76% of the income tax i pay goes directly to important things like interest on past government incompetence pic.twitter.com/H2bqQkmSx3
— Shibetoshi Nakamoto (@BillyM2k) July 22, 2024
米国民の全所得税の76%が米国債の利払い費1兆1400億ドルに支払われている
というニュースを引用し、「支払う所得税の76%が無能な政府の利払い費に支払われているのは嬉しい」と皮肉交じりにポスト。
米国債の元本ではなく、国債の”利払いのみ”で全所得税の76%が使われているのでかなりのインパクトがある記事ですね。
このポストイーロン・マスク氏が「アメリカは破産しつつある」と引用ポストしたというのが経緯になります。
イーロン・マスク
「ちなみにアメリカは破産しつつある」
America is going bankrupt btw https://t.co/UYpri3wyJU
— Elon Musk (@elonmusk) July 22, 2024
「それだけでは終わりません。間もなく、連邦税収の 100% が債務の利子の支払いに充てられることになります。」
「こんなことを続けることはできない。」
「IRS、ATF、教育省、その他の役に立たない政府機関を廃止する必要がある」
恐らく、日本で同じような事を言ったら「日本には通貨発行権がある!」
っとか何とか意味不明な反応で溢れかえると思われますが、米国人は全ての人とは言いませんが、一定数は政府財政状況に危機感を持っているようです。
2,ドルの価値の破壊~についてポストした経緯。
上のポストからしばらくして、経済や貨幣の価値に関する画像と共に以下のようにポストしています。
イーロン・マスク
「ドルの価値の破壊はどこまで進んでいるのか、と疑問に思う人もいるかもしれません。」
Where are we with dollar value destruction, you might ask? pic.twitter.com/0LD8OggFqu
— Elon Musk (@elonmusk) July 22, 2024
- 銀貨:金属貨幣の時代を表しており、実物の価値を持つ通貨。
- 銀証書:紙幣でありながら、銀と交換できることを保証する証書。
- 現行の米ドル紙幣:現在の法定通貨であり、実物の価値がなく信頼によって成り立つ
- ←「YOU ARE HERE」私達はここにいます
- ジンバブエドル:ハイパーインフレーションにより価値が著しく減少した通貨。
- 弾丸:最終的には、価値がない通貨が崩壊し、暴力や混乱の象徴としての弾丸が示されている。
画像を見るとハイパーインフレによって価値が暴落した、ジンバブエドルと現行ドルの境目にいると示唆しているようです。
またこちらに関してもそんなのはありねぇ!といった否定的なコメントはあまり見られず、むしろ危機感を募らせているような反応が多々しめているように感じます。
「次の通貨で価値を持つ金、銀、不動産などの資産を購入しましょう。」
「連邦準備制度を廃止し、アメリカから中央銀行を永久に追い出せ。
中央銀行カルテルが次々と国家を破壊し、また新たに台頭する国家を破壊しに戻ってくるのはもううんざりだ。」
3,「アメリカは破産しつつある」あるのか?
米国の破産に警鐘を鳴らしているのはなにもイーロン・マスクだけではなく、レイ・ダリオやジム・ロジャース、ロバート・キヨサキ等警鐘を鳴らし続けています。
ではなぜアメリカは破産しつつあると述べているのか?根本的な理由は当ブログでは口酸っぱく伝えている米国債務です。
何度も言及しているので、詳しく言いませんが米国は35兆ドル弱の債務に膨れ上がり、債務残高対GDP比は120%です。
これは第2次世界大戦の莫大な戦費がかかる時期より更に大きい数字です。債務の増加に対してGDPが追いついてないという状況です。
更に追い打ちをかけているのが、債務に対する利払い費です。
9%まで急激に上昇したインフレに対処する為、FRBが政策金利を5.5%に急上昇させた状況が続いてしています。
それに伴って利払い費も膨らみ、その利払い費を払う為にまた債務が膨らみと雪だるま式に債務額が膨れ上がっているのが今の米国政府の財政状況です。
以下のチャートはバンク・オブ・アメリカの試算した米国利払い費のグラフですが、2024年内に1.5%の利下げがあった場合(黄色)と利下げがなかった場合(水色)の利払い費です。
利下げがなかった場合(水色)は1.6兆ドルに増加し、例え1.5%の利下げがあった場合でも1.2兆ドルに膨れ上がるとしています。
先ほどのシバイヌコインのポストのニュース記事を見ると「利払い費が1兆1400億ドルに達し、徴収された全所得税の76%を占める」とあります。
つまり、支払った所得税の76%は社会保障、医療、国防などではなく、債務の元本の支払いでもなく、あくまでも債務の”利払い費”だけで消えていくことです。
汗水たらして働いて稼ぎ徴収される税金の殆どが利払い費に消えるとなれば、どう考えても危機的状況だと思います。
また、FRB金利を上げことで債券価格は下落し、多くの銀行が含み損を抱えています。
銀行システムを救うためにFRBは、2008年のリーマンショック時よりも多くの緊急融資を行っています。
左の青い山は2008年の危機時の貸し出しです。その小さな山がそうです。紫はCOVIDです。
そして、右の巨大なオレンジ/アクアマリンのモンスターが2023年の銀行危機です。
2008年よりもはるかに高いことがわかりますか?
https://x.com/balajis/status/1815516305740718369
「米国経済は何も問題ない」と言わざるを得ない立場の米国財務長官イエレン氏ですら「米国の財政赤字が今後どうなるのかを懸念している」と発言しています。
https://Twitter.com/financialjuice/status/1785318420721840626
(一応、米国は軌道修正はできると発言はしてますが)
著名な経済学者で元国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストのオリヴィエ・ブランシャール氏も次のように米国債務に関して以下のように警鐘を鳴らしてます。
米国が債務を抑制する前に事態が混乱し、制御不能になる可能性やBRICS同盟はこの機会を利用し、米ドルの代わりに地域通貨を貿易に利用する可能性があります。
「米国では、主要な赤字が非常に大きく、いかなる形でもそれを減少させる試みが全く見られないことを非常に心配しています」と述べ、ハウス・オブ・ローズ経済問題委員会に対して発言しました。
彼はさらに、「米国が苦しむと、これは世界の他の地域に影響を及ぼす」と付け加えました。
BRICS: US Risks Fiscal Crisis as Borrowing Soars, Warns IMF Economist
では、この債務問題をどうすば解決できるか?ですが
・生産性を上げるつつ支出を削る
・諦めてデフォルトする
・インフレによって債務を圧縮する(通貨の価値下落)
一般的にはこの生産性を上げるつつ支出を削る・諦めてデフォルトするの2つです。
例えるなら借金まみれのおじさんが1,000万円の債務を返済する場合、頑張って給料を上げ、無駄遣いを少しずつ減らすか、諦めて自己破産を選択するのに似ています。
トランプ氏が先日「生産性を上げることで債務問題を解決する」といような事を発言してましたが、これは・生産性を上げるつつ支出を削るに該当しますね。
→ロバート・キヨサキ「トランプが再選で金、銀、ビットコインは上昇する」は実現可能か?
ただ、中央銀行の場合テクニカル的には無限に通貨を発行し、経済破綻を免れることが出来ます。
しかし、当然ながら通貨を発行すればするほど、インフレを引き起こします。
インフレとは物価上昇です。物価上昇とは通貨の価値が減少すると言うことです。
法定通貨の価値が減少すれば、相対的に国の債務負担は軽くなります。
なぜ、どこの政府もインフレ2%を目標にしているかといえば最も多くの債務を抱えている政府自身の負担を軽くする為です。
これが次章のドルの価値の破壊につながってきます。
4,ドルの価値は4年間で少なくとも25%の価値が減少している?
現在ドルは基軸通貨であり、最終的にはあらゆる物や通貨の価値がドル建てで測られます。
よく「ドル円が160円になった」「ドルが上がった・下がった」などと話されますが、それはドルが物や通貨の価値を測る基準であるからです。
ではそのドルは下がっているのでしょうか?
まず長期的な視点でみると1913年にFRBが創設されて以降、ドルの価値は下がり続けています。
流通するドルの数が増えるにつれて商品やサービスの平均価格が上昇し、ドルの購買力が低下しています。
1929年までに消費者物価指数(CPI)の値は1913年と比較して73%高くなりましたが、1ドルで買えるのはトイレットペーパー10ロール分だけになりました。
特に1971年にニクソン大統領が金本位制を放棄してから、通貨の更に急速に下落してます。以下はゴールドと法定通貨の比較したグラフです。
では最近はどうなのか?ですが、世界的パンデミックによる経済破壊を支える為に世界中で大規模なな緩和が同時に行われ、インフレは更に加速している状況です。
ドルの価値は2020年~2024年でわずか4年間で少なくとも25%の価値を失っています。
よく日本の実質賃金25ヶ月マイナス!と報道されていますが、米国もインフレによって購買力は下がっています。
更に元米国財務長官ラリー・サマーズによると金利上昇によるローン支払いの急増を含めると、ドルの価値は25%より減少していると警鐘を鳴らしています。
経済学者によるとFRBが創設されてから、ドルの価値は96%減少しつずけているという説もあります。計算式により数値は前後すると思いますが、概ね正しいでしょう。
また、日本では物価上昇に賃金が追いついてないと嘆いているのを見かけます。
ただ、賃金が物価上昇に追いついたところで現在の貯金の購買力が上がるわけではありません。
つまり、インフレによる通貨の購買力減少を回避するには、何かしらインフレに強い資産に変えて置く必要があります。
1970年代も現在のようにインフレと景気後退が同時に襲うスタグフレーションが発生し、いち早く通貨の購買力低下に気づいた投資家は金や銀でインフレから資産を守ることに成功してます。
→【2024年版】銀が600ドル(20倍~)を超える?価格上昇する8つの材料とは?
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