サムスンが新型EV全固体電池バッテリー発表!銀が16,000トン消費される?

サムスンは、2024年のSNE Battery Day Expo(韓国・ソウル)で最新のバッテリー技術を発表され話題になっています。

そして、全固体電池に銀が大量に消費されるので、ますます銀の供給が足りなくなるという予測もあるので紹介していきます。

1,サムスンが発表した全固体電池とは?

まずはどのようなバッテリーなのか特徴をまとめがコチラ↓

サムスン全固体電池のまとめ
  1. 600マイルの走行範囲と9分の充電
    サムスンの新しい全固体電池は、1回の充電で600マイル(約965km)走行可能で、9分で充電が完了。
  2. 20年のバッテリー寿命
    この全固体電池は、約20年間使用できる長寿命を持ち、CATLなどの「100万マイル」バッテリーと同様の耐久性。
  3. エネルギー密度500Wh/kg
    エネルギー密度が500Wh/kgであり、現在主流のEVバッテリーの約2倍(270Wh/kg)に相当。
  4. 2027年の量産開始予定
    サムスンは2027年までに全固体電池の量産を開始する計画を立てており、すでにパイロット生産ラインを稼働させています。
  5. 「スーパープレミアム」EVセグメント向けの初期導入
    これらの高性能バッテリーは生産コストが高いため、初期の導入は600マイルの走行範囲を持つ「スーパープレミアム」EVセグメントに限定される予定。

ソースはこちら↓

https://interestingengineering.com/energy/samsungs-ev-battery-600-mile-charge-in-9-mins

また、トヨタとサムスンは2027年に固体電池の量産を開始することで合意していることも報道されています。

トヨタとサムスンは2027年に固体電池の量産を開始することで合意しており、トヨタはその新技術をレクサスのプレミアムモデルに最初に導入する予定です。
https://www.rideapart.com/news/728316/samsung-ss-ev-battery-coming-soon/

発表のサムスンの固体電池は、軽量化や熱安定性の向上など、固体電池に関連するすべての利点を備えています。

しかし、おそらく最も注目すべき点は、サムスンの固体電池技術が1キログラムあたり約500ワット時のエネルギー密度を持っていることです。

これは、現在のほとんどのEVバッテリーの約2倍に相当します。

つまり1回の充電で約600マイル(約965km)の航続距離が期待できるということです。

これまでEVの最大の課題は、充電時間の短縮と航続距離の延長でしたが、たった9分の充電で約965km走行できる性能できるのであれば、ほぼ弱点は払拭できていると言っていいかと。

ガソリン車と違い”家で常に充電”できるというのが強すぎますね。

常に満タンにチャージでき約965km走行できるのであれば、普段使いはもちろん旅行などで遠出する場合でも、宿泊先で充電できればむしろガソリン車よりも便利な気がします。

(もちろんこれらはEVステーションのインフラが整ったらの話ですが)

なぜか日本ではEVは向いていないというネガティブキャンペーンをやっているように見受けられます。

EV分野では中国に先を越されているのが気に食わないのか知りませんが、トヨタもかなりBEVに力を入れており、出光とトヨタ、バッテリーEV用全固体電池の量産実現に向けた協業を開始を発表してます。

課題であった電池の耐久性を克服する技術的ブレイクスルーを発見したため、従来の HEV へ
の導入を見直し、期待の高まる BEV 用電池として開発を加速
現在量産に向けた工法を開発中で、2027-2028 年の実用化にチャレンジ

https://global.toyota/pages/news/images/2023/06/13/0500/electrified_technologies_batteries_jp.pdf

海外にエネルギーインフラが握られている日本こそEVは向いていると思います。

日本の原油輸入、中東依存率は実に94.1%ものぼります。

結局、中東などから石油を輸入しなければいけないので、もし海外情勢が悪化した場合最終的にはエネルギー依存先の海外の意向に従わなかればならなくなります。

ちなみに令和6年6月の原油輸入量を輸入量の多い順にみると、

(1)アラブ首長国連邦(410万kl、前年同月比100.8%)
(2)サウジアラビア(410万kl、同91.0%)
(3)クウェート(83万kl、同75.5%)
(4)カタール(39万kl、同73.7%)
(5)エクアドル(16万kl、同206.4%)

今のところ石油輸入国と関係が悪化しているわけではないものの、どんなに経済大国になろうとエネルギーが最終的には依存国には逆らえないということです。

また、直接的に中東と関係が悪化しなくとも今起こっているような、中東の紛争で石油輸入が滞る可能性も0ではありません。

話をバッテリーに戻すと、このサムスンが発表した全固体電池は銀が大量に使われるのでは?という予測があります。

2,銀-カーボン(Ag-C)複合層とは?銀が大量に消費される?

サムスンが開発していた全固体電池の発表の記事を見ると次のように書いてあります。

サムスン先端技術研究所(SAIT)とサムスンR&D研究所日本(SRJ)の研究者たちは、高性能で長寿命の全固体電池に関する研究を、ジャーナル『Nature Energy』に発表しました。

サムスンの研究者たちは銀-カーボン(Ag-C)複合層をアノードとして提案しました。

チームによると、Ag-C層をプロトタイプのポーチセルに組み込むことで、バッテリーの容量を大きくし、サイクル寿命を延ばすとともに、安全性を向上させることができたとのことです。厚さ5µmの超薄型Ag-Cナノ複合層は、アノードの厚さを減らし、エネルギー密度を最大で900 Wh/Lまで向上させました。

また、このプロトタイプは従来のリチウムイオン電池よりも体積で約50%小型化されました。

チームは、このプロトタイプのポーチが、EV(電動車)が1回の充電で最大800km走行でき、サイクル寿命が1,000回以上になる可能性があると述べています。

Samsung researchers describe all-solid-state battery with silver-carbon composite layer

金属の中で最も電導性が高い銀と軽量で高い比表面積を持つカーボンを組み合わせる事で、エネルギー密度の向上、バッテリーの軽量化、寿命と安全性の向上しているとのこと。

では、この全固体電池に銀がどのくらい使用されるのか?

貴金属研究家のKevin Bambrough氏の予測によると、1台の車両に1kg程度の銀が必要になるのではないか?と予測をたてています。

公式な数字はまだ入手できませんが、サムスンの固体電池には1セルあたり最大5グラムの銀が使用される可能性があり、通常のEVバッテリーパックには約200セルが含まれ、100 kWhの容量の場合、1台の車両に約1kgの銀が必要になるかもしれません。

世界の車両生産が年間約8000万台であることを考えると、その20%(1600万台)がサムスンの固体電池を採用した場合、年間の銀需要は約16,000トン(1600万台 × 1 kgの銀)が見込まれます。

これは、現在の世界の銀生産量(年間約25,000トン)の大部分を占めることになり、銀市場への大きな影響を示しています。

さらに、銀はすでに不足しており、太陽光発電産業からの工業需要が年間消費量を供給量を上回って押し上げています。

https://x.com/BambroughKevin/status/1822086925416644792

世界の銀の生産量が年間約25,000トンに対して、もしこの全固体電池EV車両が世界の車販売数の20%を占めるならそれだけで16,000トンが使われるという予測のようです。

銀の使用量が例えこの予測の半分だったとしてもそれだけで12,500トンが年間で消費されるというと凄まじい量に感じます。

そもそも現時点で銀の供給不足は4年も続いているので、本当に銀不足になりそうですね。
【2024年版】銀が600ドル(20倍~)を超える?価格上昇する8つの材料とは?

【まとめ】ブレイクスルーが起きた場合、EV以外にも波及するのでは。

これは私の考えですがこれほどのブレイクスルーを引き起こす性能のバッテリーが開発されるならばEVが分野に留まらないだろうなということです。

将来的にバッテリーの小型化が進みドローンやスマートフォン等に採用され始めたら、更に凄まじいスピードで銀が消費されることになります。

銀が第2の原油であると予測もあります。

というのは現在は原油からエネルギーを作り出し、原油を保存することでエネルギーを保存しています。

しかし、ソーラーパネルでエネルギーを作り出し、全固体電池で大量に電力を保存できることになれば全てとは言わないまでも、原油から銀にエネルギーのシフトが起こりえる可能性はありそうです。

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