米国利下げで市場が下落した理由とは?FOMC&日銀会合を解説。金銀は最終的に伸びる理由とは?

1,パウエル議長は25bpsの利下げを発表後、市場は全て下落

2024年最後であるFOMCにおいてパウエル議長は25bpsの利下げを発表。

利下げにも関わらず、金銀も含む市場は大きく下落しています。

S&P 500は2020年3月以来の最大の下落を記録し、時価総額は1.8兆ドル減少しました。

 

ダウ平均株価も10日連続で下落しており、これは1974年以来の大きな下落なようです。

ダウ平均株価は1,123ポイント以上下落(2.6%) 、1974年以来初の10日連続下落。

バブルがはじけつつある

https://x.com/JacobKinge/status/1869498345980580051

そして金や銀も下落。いずれも、このところ低調な動きでしたが、FOMC会合直後で更に大きく下落してます。

金は2635ドル前後だったのが、2580ドル程度まで下落。執筆時点ではやや回復してますが、2600ドル前後。

銀は30ドルを下回り、現在も金ほど回復していませんね。

では米国債券はどうなのか?というと、10年債の利回りは4.5%まで急激に増加しています。

利回りが上昇するということは債券が売られているということです。

このような金利上昇環境では、金や銀といった無利息資産の魅力が低下し、売られるというわけです。

そして、株価が下落する原因は金利上昇= 消費者や企業の借入コスト上昇です。

企業の借入コストが上昇すると利益率が圧迫され、配当金の支払い能力や新たな投資の実施が難しくなると市場は予測します。

もう一点は、消費者側の借り入れ金利も上昇するので、経済全体の成長が鈍化する恐れがあります。

これは長期的に企業の業績に悪影響を及ぼし、株価下落の要因となるわけです。

金利上昇=株価、金銀下落するのは金融市場の基本的なメカニズムに基づいた動きです。

(パンデミック後にきんり金利上昇と共に株価など最高値更新していたのがむしろ異常)

しかし問題なのはFRBが利下げを発表する度に、なぜ金利は上昇しているのか?という点です。

市場の事前予測では、98.5%の確率で25bpsの利下げが行われると予測されていました。

https://x.com/Barchart/status/1867072549038821784

既に利下げが織り込み済みであれば、ここまで急激に利回りが上昇し市場が下落するのは辻褄が合いません。

なぜ、利下げを発表したのに市場は下落しているのでしょうか?

2,なぜ、利下げなのに金利は上昇しているのか?2025年の利下げ回数減

利下げしたのに関わらず金利が上昇した原因は、FRB自身がインフレ再燃を予測しているからです。

下記の通りFRBは2025年の見通しを”3回の利下げ”の予定から”2回の利下げ”に利下げペースを落としています。

今後利下げペース鈍化を予想しているということはFRBがインフレ再燃を認めているようなものです。

インフレ再燃なら利下げペースが更に落ちる可能性や、場合によっては利上げする可能性もありえます。

もう一点が2025年末のPCEインフレ予想も引き上げている点です。

一方、FRBは2025年末のPCEインフレ予想を2.1%から2.5%に引き上げた。

さらに、FRBは現在、2026年末のインフレ率が2.1%になると予想しており、これは依然として目標の2.0%をわずかに上回っている。

明らかに、FRBはインフレが問題であることを再び認めた。

https://x.com/KobeissiLetter/status/1869502897127588122

FRBはPCE(個人消費支出)は、CPI(消費者物価指数)よりもを重要視しているインフレ指標です。

つまり、この予測引き上げは”FRBがインフレが予想以上に長期化するリスクを認識”しており、これが金融政策の慎重化につながっていることを示唆しているということです。

FRBが今後インフレの長期化を予測し、利下げペース鈍化を発表しているなら、更に利下げペースは遅れるかもしれない(場合によっては再利上げ)

更に言えば今後トランプ大統領の経済政策は、高関税をかけるなどインフレ要因だというのが市場の共通認識です。

トランプ関税で貴金属が高騰?金銀がフロリダ州の通貨になる可能性等 9つの金銀ニュース【12月第3週】

→一旦、株、金銀、債券など資産を売却し様子を見る(一時的に通貨が強くなる)

ということですね。

現にドルの強さを表すDXY(ドルインデックス)はFOMC会合時に急激に上昇しています。

ドルが強くなるということは、他の通貨は相対的に弱くなるということです。

現在、執筆時点でハト寄り発言があった植田総裁の会見後、157円まで急激に円安になっていますが、FOMC直後から円安になっています。

植田総裁

「春闘のモメンタム、ある程度の情報は入るが、(今後の方向性を決める)大きな姿がわかるのは3月もしくは4月」

そして、円安が急激に加速しているということは、円建てゴールド価格上昇要因にもなります。

FOMC直後は円安でもゴールド下落幅の方が大きく、円建てゴールドも下落していますが、日銀会合後はむしろFOMC前よりも上昇しています。

金が下がった上がったとドル建て価格だけで見る方もいますが、ゴールドは法定通貨の下落に対するヘッジです。

当然ですがドルに対してだけでなく、自国通貨の下落に対してもヘッジにもなります。

私が金の価格を追っているのは、ドルの暴落だけでなく自国通貨も懸念しているからです。

「であれば米国の財政が健全であれば金でなくても、米国株や米国債券でも良いのではないか?」と、思われるかもしれません。

私は日本円の下落とともに先にドルが下落する可能性も懸念しています。

というのもFRBが利上げペースを落とすということは、米国の財政赤字の悪化が急加速する可能性があります。

3,【今後も金が強い理由】FRBが利下げ鈍化=米国債務増加→米国財政赤字悪化

利下げペースが鈍化するということは、米国債務利払い費は減少しないということです。

ゴールドが最高値を更新し続ける”本当の理由”とは?今後も上昇する可能性は高いのか?

以前より当ブログでは何度もお伝えしていますが、米国の債務額は36兆ドルを超え、増加ペースは現時点でも全く衰えていません。負債は36.2兆ドルを突破しました。

https://x.com/RealEJAntoni/status/1869773417853100351

債務が増加すれば、債務に対する利払い費用も増加します。

FRBは5.5%もの高金利を続けてきたので、米国債務の利払い費が急激に増加している状況です。利払い費だけで1兆ドルを超えており、もはや国防費や健康医療費の支出を超えています。

国防費(Defense Spending):青い線

総利子費用(Gross Interest Expense):赤い線

社会保障費(Social Security Spending):緑の線

健康医療費(Health Spending):ベージュの線

債務が増えれば利払い費が増加し、元の債務額も増加し、「借金を借金で返す」ようなような状態です。

今まで低金利だから!と借金で贅沢な暮らしをしてきた、借金まみれのおじさんが銀行から「金利上げますんで」と言われ借金のペースが加速するようなものです。

バンク・オブ・アメリカの試算によれば、年内に1.5%利下げが行われた場合、利払い費は1.2兆ドル程度になると予測していました。

現在は12月最後の利下げで合計1%利下げが実施されましたが、これではほとんど利払い費は減りません。

そして、2025年も50bpsしか利下げしないとなると、上の試算より速く債務が増加すると可能性があるということです。

つまり、FRBは早急に金利を引き下げなければ、自己破産(デフォルト)か、更に速いペースで債務増加するしか選択肢がないということです。

米国がデフォルトを選択する可能性が低いですが、もしデフォルトを選択すれば債券は暴落。

米国債が暴落すればドルも暴落するでしょう。世界中が米国債とドルに依存している金融システムで全てが暴落します。

一方、更に速いペースで債務が増加する場合はどうなるのか?こちらは債務増加=紙幣増刷によりインフレが加速していく可能性が高いです。

債務増加とはすごくザックリ言ってしまえば、市場に紙幣をばら撒く=マネーサプライの増加です。

市場にマネーが増加すればインフレを引き起こし、インフレが引き起こされるなら金や銀なども価格も上昇していきます。

以下のグラフは貴金属研究家でもあるジェシー・コロンボ氏のデータですが、M2マネー増加とともに金価格が上昇しています。

https://www.bullionstar.us/blogs/bullionstar/gold-uptrend/

青線M2マネー、黄線 金価格

イーロン・マスク氏も何度も政府の過剰支出により、米国経済は破綻に向かっていると警鐘を鳴らしています。

連邦政府の過剰支出がインフレを引き起こす

イーロン・マスク氏は政府功率省に任命され、政府支出を削減するとしています。

ただ、急激な支出削減は即ち景気後退に繋がりますし、米国議員は支出削減に反対するでしょうから、実際には難しいというのが市場の共通認識です。

また、たとえ奇跡的に政府支出削減に成功したとしても、これは政府財政の話です。

政府の支出が削減出来たとしても民間まで救えるわけではありません。利上げによって、米国債券を大量に抱えている銀行は含み損が膨らんでいます。

以下のグラフはFDIC(連邦預金保険公社)に加入しているすべての金融機関の含み損です。

https://x.com/Barchart/status/1867444831481426421

約3290億ドル(約51.54兆円)もの含み損です。利下げペースが遅れるとすれば、これらの含み損を抱える期間は長期化しそれだけリスクが高くなるということです。

またこれは何も米国の銀行だけの話ではなく、日本などの大手金融機関も米国債を大量に保有してます。

農林中金はバランスシートが一時的に悪化し、10兆円の米国債を売却し赤字額は1兆5,000億円に膨らんでいます。

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20240618-OYT1T50176/

もっとも安全資産であると言われた米国債なので、世界中の金融機関で保有していると思われます。

利下げペースが遅れるほど、含み損が続きその間に景気後退などでバランスシートが崩れれば、債券といえど損失確定せざるを得ないでしょう。

もし、米国債を同時に大量に売却せざるを得ないような状況になれば、債券価格は暴落しドルも暴落した場合どの資産が生き残るでしょうか?

一時的には金銀なども下落する可能性もありますが、結局は金銀などに資金が流入するのではないかと予想してますが、果たしてどうなるでしょう。

私は複数のシナリオを描いていますが、どう転んでも最終的には金などのコモディティが上昇する気がしてなりません。

だからこそ、世界中の中央銀行は史上最速のペースで金を購入し続けているのでしょう。

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