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マイケル・セイラー氏といえば暗号通貨業界で知らない人はいないほど、有名なビットコイン信者です。
マイクロストラテジーCEOであり、この会社が準備資産としてビットコインを購入し始めたことで、熱心なビットコイン支持者というのが広く知られるようになりました。
このマイクロストラテジー社は、合計402,100 BTC(約380億ドル)150円換算だと約5兆7000億円にも登ります。
またセイラー氏個人でもビットコインを17,732 BTCと大量に持っています。
そのセイラー氏が「米国の持っている金を全て売って、その資金でビットコインを買うべきだ!」と発言し波紋を呼んでます。
「アメリカの金を全て売り払い、その資金でビットコインを買うべきだ。
そうすれば、実質的にコストなしで取引が完了する。こうすることで、金という資産クラスの価値を根本的になくすことができる。
我々の敵国は銀行に大量の金を保有しているため、彼らの資産価値はゼロに近づき、
一方で我々が保有するビットコインの価値は100兆ドル規模に膨れ上がるだろう。」
"Dump your gold, sell all the US gold and buy bitcoin, then the trade is free. You will demonetize the entire gold asset class and our enemies hold gold in their banks so their assets would go to zero, our assets would go to a hundred trillion dollars." @saylor https://t.co/nl4NDOtPrz pic.twitter.com/IZMv6qVHAw
— Adelgary (@Adelgary) December 6, 2024
リプ欄見て頂ければ分かりますが、波紋というよりも炎上に近いです。
人生で聞いた中で最も馬鹿げた話だ😂😂はるかに馬鹿げた話だ😂
人々がこの話を、信じているなんて信じられない🤥 このような一番愚かな話を聞いたことがあるだろうか。
もしこのカードの家(=脆弱なビジネスや投資スキーム)が崩壊したら、彼に放送時間を与えていたネットワークは、ピラミッド(スキーム)が崩壊した時に責任を問われるべきだろうか?
「ビットコインが100兆ドルの価値を持ち、我々の敵はゼロドルの価値しかない金を持つ。文字通りのハイパーインフレーションだ。なんて素晴らしい(馬鹿げた)時代に生きているんだろう😂😂😂」
こういう内容は、サイクルの底ではなく、むしろ頂点に近い時期に耳にすることが多いです。」
貴金属投資家の間でも、暗号通貨完全否定派と暗号通貨も肯定的という人もいらっしゃいますが、あまりにも発言が馬鹿げているので、どちらからも全力で叩かれている状態です。
さすがに発言がやばすぎるのか、普段マイケルセイラーを崇拝しているような、日本の暗号通貨系アカウントでも完全スルーのようです。
オウンゴールがすぎるので当然ですが。
個人的には暗号通貨は支払い手段としては、非中央集権という点、中央銀行が勝手に刷れないという点で優れていると思います。
ただ、価値の保存手段としては電力とネット、端末に依存するので金などより遥かに劣っています。
1,価値の保存手段としては現物に劣る理由
暗号通貨の取引は基本的にマイニング(取引の検証)とウォレットの管理に電力を必要としますし、マイニングはネットを介して行われます。
ネット接続がなければ、新しい取引をネットワークに送信することも、他のノードがその取引を検証することもできません。
停電やネットインフラがサイバー攻撃など、ネット遮断する事態があれば取引はネットワークが再接続されるまで保留され処理が遅延します。
インフラが復旧し再接続すればネットワークが再び同期され、保留されていた取引が処理されますが、復旧するまでは使い物にならないということです。
しかし、現代において恒久的にインフラが復旧しない自体は起こり得るのか?
フィンランドとリトアニアの海底ケーブル切断-原因究明急ぐ
データセンターに接続されているヘルシンキとドイツ北東部ロストクを結ぶ全長1200キロの高速光ファイバーケーブルがスウェーデン南部のバルト海で損傷。
所有・運営会社シニアの経営陣は記者会見で、すべての光ファイバー接続が止まっており、完全に切断された可能性が高いと述べた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-19/SN5SEZDWX2PS00
マイニングには大量の電力が必要ですので、停電もネックです。
2021年にはビットコインが一時14%急激に下落しましたが、ビットコインのマイニング(採掘)拠点の1つとされる中国の新疆ウイグル自治区で起きた停電が下落要因とするむきもあります。
ビットコイン、一時14%急落 ウイグルでの停電が原因との見方も
https://jp.reuters.com/article/crypto-currency-bitcoin-idJPKBN2C50PW/
また、極端な話ですが高高度核爆発によるEMP(電磁パルス)で電力インフラや通信システム、情報機器の機能を停止させることもできます。
ここまで来るともはや暗号通貨どころではないですが、その気になれば相手国の資産を一瞬で使えなくする事も可能ということです。
現代において電力やネットが長期間遮断される事態があるのか?ですが、最近の世界情勢を見るとありえなくはない気がします。
一方で金などの現物はどんなにインフラが荒れようと、それ”自体が価値”です。
また、暗号通貨は誕生してからたった15年しか経過していないのに対し、金は5,000年以上もの間幾多の紛争、災害、飢餓があろうとも価値が0になったことはありません。
現在も価値を保存し続けています。
個人的には
支払手段=暗号通貨、
価値の保存=金などの現物
このように使い分ければいいだけだと思います。
わざわざ、金を売却する意味がわかりませんね。
2,中央銀行はビットコインでは無く金を買っている
通貨価値というのは一人で勝手に価値がある!
と押し付けるものではなく、取引する相手が価値があるものと認識しているから、通貨価値が保てているわけです。
電子上のマーケットやドルが通用する国では、ドルは便利な通貨ですが日本のスーパーでドル紙幣は価値があると言い張っても取引するのは難しいでしょう。
そして、金よりビットコインが価値があるなら、世界中でビットコインを購入するはずです。
しかし世界の中央銀行はビットコインではなく、金を大量に積んでいます。それも史上最速で。
もし、金よりもビットコインが価値保存する手段として上であれば、少しくらいはビットコインを購入しても良さそうですが、現在そのような動きは見られません。
先日トランプ大統領が「米国債務をビットコインで支払えるかもしれない」と発言があり、話題になりましたが
https://Twitter.com/WatcherGuru/status/1819420124190797957
ビットコインで支払う!と言っても債権者側が受け入れるとは限りません。
例えば米国債券は現在は日本が保有量が1位である一方、中国は約7,720億ドルの米国債を保有しており、これは日本に次いで大きい保有額です。
そして、中国は暗号通貨の取引とマイニングを禁止しています。
ネパール、ベトナム、エジプト、バングラデシュなどの国々では依然として暗号通貨の使用が禁止されています。
また先日サウジアラビアが米国債を大量に保有しているというのが話題になりましたが↓
サウジアラビアの米国債保有高は4年半ぶりに最大規模
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-01/SNTN62DWRGG000
(米国債の中でもT-Billは1ヶ月~1年の短期国債でしたが)
→トランプ氏「BRICS通貨創設や脱ドルは100%の関税」脱ドルが止まらない4つの理由とは?
サウジアラビアは現在のところ暗号通貨の取引を禁止しています。
このような状況で「ビットコインで支払うから」が通用するのでしょうか?
ただ、インフレによって購買力が低下するドルはよりはマシということなのかもしれません。
というのもつい先日のMeet the Pressというインタビューでトランプ氏は「関税によってアメリカ人の負担が増えないという保証はできない」と述べました。
つまり、今後インフレが加速する可能性があるということです。
だからといって、世界各国がビットコインでの支払いを許容するようには思えませんし、出来ないならむしろ金で払えというような流れになる気もします。
3,敵国の金準備金の価値を0にする?
また、マイケルセイラー氏は「敵国の金準備の価値を0にすることができる」と語ってますが、公式にはG7側各国の金準備金の方が多いです。(あくまで表向きの情報ですが)
アメリカ: 8,133 t
ドイツ: 3,353 t
イタリア: 2,452 t
フランス: 2,437 t
ロシア: 2,333 t
中国: 2,192 t
スイス: 1,040 t
日本: 847 t
インド: 801 t
オランダ: 612 t
トルコ: 479t
これらの国の金準備金の価値も0にするというのでしょうか?横暴にもほどがありますね。
米国が経済、軍事力、資源面で一強であれば、他の国もイヤイヤ追随しなければならないでしょう。
しかし以前の記事で解説しましたが、全ての面において米国一強は終わりつつあります。
→トランプ氏「BRICS通貨創設や脱ドルは100%の関税」脱ドルが止まらない4つの理由とは?
ついでにいえば現在のガザ紛争停戦拒否権発動したり、いまだに兵器を送り続けていたりと、米国嫌悪するような状況が続いています。
画像は2月ですが、11月の採決でも米国は否決してます。
US vetoes Gaza ceasefire call at UN
また、Googleが量子コンピュータを発表したことで、暗号通貨が解読されるのでは?という懸念もあります。
Google は、トップクラスのスーパーコンピューターでも 10,000,000,000,000,000,000,000,000 年かかる計算問題を 5 分以内に解決できる新しいチップで量子コンピューティングのブレークスルーを実現しました。
10,000 = 万(まん)
100,000,000 = 億(おく)
1,000,000,000,000 = 兆(ちょう)
10,000,000,000,000,000 = 京(けい)
10,000,000,000,000,000,000 = 垓(がい)
10,000,000,000,000,000,000,000 = 穣(じょう)
「百穣」は10の26乗
このニュースを受けてビットコインは一時大暴落しています。
現時点では量子コンピュータで暗号通貨を解読するのは難しいですが、このような”懸念点がある”というのはデメリットでしょう。
私が懸念しているのは米国等の限られた大国が、このような量子コンピュータ等の技術を独占するような状況です。
現在のドルシステムと同じように一方的に制裁することも可能です。
4,金は装飾品、工業用としても使われる(価値が0になることはない)
いうまでもなく金は通貨としてだけではなく、5,000年以上も装飾品としても利用されています。
殆ど腐食、酸化しない他の物質よりも優れた耐久性で、半永久的に光り輝いています。
博物館など行くのが好きな人であれば、分かると思いますが数千年前のエジプトの装飾品等を見るとまるで昨日掘り出されたかのように輝いています。
美しいというだけでもそれだけで価値があるというのに、それが半永久的に続くのに価値が0になることなんてあり得るでしょうか?
また銀には劣りますが、導電性が高いので精密機器にも使用されます。
一方、ビットコインは取引きには便利ですが、光り輝いたり身につけて着飾ることも出来ず、工業用途にも使えません。
【結論】ビットコイン否定派ではないが、金の代わりにはなり得ない
私自身ビットコイン完全否定派ではないですが、金の代わりにはなり得ないと思っています。
そもそも、競合する存在ではなく、支払い手段→暗号通貨、貴金属→価値の保存手段
このように使い分けすればいいだけだと思います。
いずれにしろ、今の米国がビットコインをゴリ推ししようと、他国が追随して金を捨ててビットコインを買うという可能性は限りなく0に近いでしょう。
それにしても、米国の財政が健全であれば、金を売らず堂々としていればいいだけの話です。
これだけビットコイン、ビットコイン騒ぐほど米国財政が心配になりますね。
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