執筆時点ではゴールドは2,690ドルを超え、史上最高値を更新しました。
執筆している時点でもゴールドの勢いは止まらず、もしかすると2,700ドルの大台を突破するかもしれません。
同時に円安も進んでおり、150円になってます。ゴールド高、円安なので円建てゴールドも史上最高値で1gあたり1万3千円を超えています。
また、ゴールドの価格に連動する金GLDも史上最高値を更新しています。
一方でシルバーは上昇はしていますが、32ドル付近でまだ動きは鈍いです。常々言っているように、銀は供給不足が続いているので、割安とも言えます。
→2025年までに世界の銀が枯渇?専門家が警告する3つの理由とは?
銀は32.5ドルが重要な抵抗線と言われており、これを超えると50ドルまで急激に上昇する可能性があるとする貴金属アナリストも数多くいます。
逆に言えば、絶対に銀の価格を上昇させたくない勢力は、ゴールドを見捨てて銀だけはなんとしても死守するような展開もあるかもしれません。
いずれにしろ、最終的には銀も上昇せざるをえなくなると思いますが、金が価格上昇を続ける中、銀の動きは鈍いような状態は続く可能性もあるので、あまり前のめりにならないようにしたいものです。
1,米国債金利が上昇、米ドルが強いにも関わらずゴールドは上昇している
今ゴールドが強いと言えるのは、ただ価格が上昇しているだけではなく、米国債金利が上昇&米ドルが強いにも関わらず、ゴールドが上昇してるという点です。
米10年国債金利は上昇を続け4%を超えています。
金利が上昇すると、通貨価値も上昇します。ドルの強さを示す、ドルインデックス(DXY)を見ても急上昇しているのが確認できます。
ゴールドは金利も配当もありませんので、米国債金利が上昇すると相対的に金の魅力は下がり、金価格は下がるというのがセオリーです。
しかし、FRBが金利を上げ始めたここ2年は米国債金利が上昇しても、ゴールドも上昇傾向にありました。
ただここ最近は更に金利を無視して上昇する動きが顕著で、いまはもう完全に金利上昇を無視しているような上昇の仕方です。
ファンドマネージャーは先月、債券への配分を過去最大規模で削減したというデータもあるようです。
金利が上昇し続けている点を見ると、投資機関が安全資産とされる債券を売却し、ゴールドに投資をし始めた可能性もあるかと思います。
なぜ、ゴールドは上昇し続けているのか?
2,「紛争リスクで金価格が上がっている」は当てにならない。
特に日本で多いですが未だにゴールドの上昇が、紛争リスクと発信しているのを見かけます。
確かに紛争リスクでも上昇傾向はあるものの、根本的な原因ではありません。
事実、金価格を見ると2019年から急激に上昇してますが、当時はまだ露、ウの紛争前です。
露、ウの紛争が始まったのは2022年2月24日。確かに少し上昇してますが、その後下落していますし、2019年の上昇に比べれば微々たるものです。
金に限らないですが、間違ったストーリーで投資を開始すると、間違ったストーリーで資産を手放し、利益を逃すことになります。
例えば、少し前に「金の価格は中国政府が購入しているからに違いない」という主張が多く見れましたが、5月から中国は金の購入を停止しています。(表向きは)
→中国は5月の金購入を停止!ゴールドの価格上昇の根本的な理由と今後の価格の予測。
しかし、ご存知の通り金の価格は5月以降も上昇を続け、現在は2,700ドル付近。
当時は2,300ドル前後でしたので、そこから400ドルは上昇していることになります。
もし、「金が上昇しているのは中国が買っているからだ」という間違ったストーリーで、金を保有している人はどうするでしょうか?
中国が金の購入を停止したというニュースを聞いたら、そこでその人のストーリーは終わり、金を手放すに違いありません。
実際、多くの人が金を手放したようで、このニュースが流れた時、金価格は下落しました。
ではもし紛争リスクによって金価格が上昇している!っと本気で信じている人は、紛争が終わったらどうするでしょうか?恐らく殆ど手放すでしょう。
このように間違ったストーリーで始めると、間違った出口で物語は終わり、得られるはずだった利益を逃すことになります。
3,ゴールドが上昇を続けている根本的な要因
当ブログを読んでいただいている読者さまは、読み飛ばしていいレベルですが、根本的な原因は米国赤字財政とドルの兵器化です。
地政学リスク、インフレ、経済不安などありますが、全ての根源は米国赤字財政です。他はほとんどノイズです。
現在世界中で使われるのが基軸通貨の米ドルです。
言うまでもなく米国の通貨ですが、米国の経済、政治的都合で価値が増減するリスクがあります。そして、ここ数年はこのリスクが如実に世界に知らしめられました。
米国の債務額は35兆ドルを超え、インフレは最大9%まで上昇。
インフレ退治の為に5.5%の高金利が続いていた事で、利払い費だけでも1兆ドルを超えてます。
バンク・オブ・アメリカの試算によれば、年内に1.5%利下げが行われた場合でも利払い費は1.2兆ドル程度になると予測しています。
これに関してイーロン・マスクは「米国は破産しつつある」と警鐘を鳴らしています。
→イーロン・マスク「米国は破産しつつある」ドルの価値は過去4年間で25%の価値が減少しているのは本当か?
債務が増加してもそれに伴ってGDPが上昇するのであれば、まだ財政は健全とみなされる場合もあります。
企業が借金をし設備投資をしても、それに伴って利益が上がるのであれば何も問題にならないのと似ていますね。
ただ、米国は2008年のリーマンショック後、経済を支える為に大規模な緩和策を実施、2012年には政府の負債がGDPを超えています。
コロナパンデミック時に更に大規模な緩和策が実施され、急激にGDPと債務に開きが出ているのが確認できます。
もはや数学的に返済不可能とも言われている債務状況です。
これに加えてインフレ+景気後退懸念です。
もし、インフレが再燃するようであれば金利を引き上げて、再度経済を冷やす必要が出てきますが、そうなると景気後退になる懸念が出ます。
景気後退が発生すれば、結局は経済を支える為に、パンデミック時以上の大規模な緩和策を実施することになります。
また、金利を引き上げるということは利払い費が再度上昇するということです。
つまり、インフレが再燃しても、景気後退が来ても結局は債務が増加するということです。
インフレがなければ、債務が増加しても問題は表面化しずらかったですが、数々の金融危機を債務発行で乗り越えてきた結果、遂にインフレが発生し問題が表面化してきたということです。
米国にできることはデフォルト。もしくは更なる債務発行(紙幣増刷)インフレ輸出です。
まず政治的にもデフォルトを選択する可能性は低いです。
となるとさらなる債務増加ですが、増加すればするほどドル資産の価値は下落していくということです。即ちインフレです。
日本を始め世界各国は米国債券等、ドル資産を大量に保有していますが、米国の都合で資産価値が下落していくということです。
世界中の取引で利用される、基軸通貨の資産なので安全資産とされてきました。
ゆえに世界中の中央銀行等でドル資産が保有されているのに、米国の都合で今後も資産価値が下落し続けるとなれば、資金をどこに逃がすでしょうか?
世界の中央銀行は史上最速のペースで金を積み上げています。
世間ではゴールドが上がっている理由は、紛争、インフレなどあれこれ複数の要因が挙げられていますが、根本を辿っていけば殆どが米国財政にたどり着きます。
中央銀行金利だの、インフレ率だの日々発表される指標を追いかけるのも良いのですが、広い視野で見ていきたいものです。
→強い米雇用統計でも金,銀は急上昇した理由は?1970年代スタグフレーションに近づいているのか?
→デビッド・ハンター「2025年半ばに株式は80%下落し、20兆ドル規模の紙幣印刷でインフレ率は25%を超えるだろう」
→ロバート・キヨサキ「金、銀、ビットコインも含め市場は崩壊する」崩壊はいつ?
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