「金の延べ棒を買うように薦める人は詐欺師」というポストが米国政府のX公式アカウントから発信されて話題になってます。
「お金を引き出して「守る」ために金の延べ棒を買うように言う人は詐欺師です。」
https://x.com/FTC/status/1836871639968936366
連邦取引委員会は、アメリカ合衆国の消費者保護と競争の促進を目的として活動している政府機関です。
このような政府機関が金を薦める人は「詐欺師」だとレッテル貼りするのは驚きです。
ポストにリンクされた記事の内容を見たのですが、金に関しては一切書かれていないのですよね。
記事の内容を一部抜粋すると
詐欺師だけが言うこと
「今すぐ行動しろ！」これは詐欺です。詐欺師は、考える時間を与えずに急かしてきます。今すぐ行動するよう圧力をかけることは、常に詐欺のサインです。
「私が言ったことだけを言え。」これは詐欺です。誰かが銀行の窓口や投資ブローカーに対して嘘をつくように言ってきたら、すぐにやめてください。それは詐欺です。
「誰も信じるな。彼らもグルだ。」これは詐欺です。詐欺師は、あなたが自分の判断を鈍らせる可能性のある人々から切り離そうとします。
「これをしなければ逮捕される。」これは詐欺です。このような脅迫は全て嘘です。誰もがあなたを逮捕から守るためにお金や情報を必要とすることはありません。
「電話を切るな。」これは詐欺です。誰かが電話を切らずにお金を引き出したり、転送したり、ギフトカードを購入するように求めてきた場合、それは詐欺師です。電話を切ってください。
https://consumer.ftc.gov/consumer-alerts/2024/03/sure-ways-spot-scammer
日本でもよくある、オレオレ詐欺の注意喚起的な内容しか書かれておらず、金延べ棒云々は書かれてません。
１，海外の反応「これは金を買えというシグナルだ」
なぜこの記事の内容でポストが「金の延べ棒が～」になっているのか謎です。
そして海外の反応を見ても、このポストに反対する声が大多数です。大体、いいねの数よりリポストの数が多い時は反対の声が多いですよね。
「これは金を買えというシグナルだ」
「連邦政府は、人々が米ドルと呼ばれる詐欺に気づき、本物のお金（貴金属）を使うようになることを非常に恐れています。」
更にはコミュニティノートで指摘される始末。
コミュニティノート
「過去10年間で、米ドルは金に対して約50%下落しました。この事実を伝えたからといって、誰かを「詐欺師」とラベル付けするのは、「相手の人格を攻撃する間違った論法」です。」
２，米ドルは金に対して約50%下落した
過去10年にどの程度金の価格が上昇したのかを見ると、2014年は1300ドルだったのが、現在は2640ドル。
金の価格が上昇しているということは、ドルの価値が下落しているということです。
円やポンド、ユーロなどの通貨は対ドルで現在の価値を測りますが、ではそのドルは何で価値を測るのか？金です。
10年で金の価格が2倍以上上昇しているということは、10年でドルの価値が半減したということです。
なぜ、ドルが下落しているのか？政府による、債務増加により引き起こされたインフレです。
米国政府債務は現在35兆ドルを超え、利払い費は1兆ドルを超えてます。
特にリーマンショックやコロナショック後の金融危機が起こる度、経済を支えるため、超大規模な緩和が実施され、政府債務も増大していってます。
その度に少しずつインフレ率が上昇し、遂にコロナショック後のインフレが急激に上昇し、現在金の価格も上昇し続けているということです。
インフレが上昇すればするほど、株式や不動産など資産バブルが発生します。つまり、既に資産を保有している富裕層の資産は更に増えていきます。
更にインフレ率が上昇することで、政府債務も実質縮小されることになります。
実質債務の減少:インフレが進むと、名目上の債務は変わらないものの、通貨の購買力が低下します。これにより、将来の支払いの実質的な負担が軽減され、政府債務の実質的な価値が減少します。
税収の増加: インフレが進行すると、物価が上昇し、各種税金も増加します。これにより、政府の税収も増加し、債務返済の負担が軽減される。
実質金利の低下: インフレが進行すると、実質金利（名目金利からインフレ率を引いたもの）が低下します。これにより、政府が新たに借り入れる際の実質的なコストが減少します。
物価で一般庶民は苦しみますが、資産を持っている富裕層、政府はインフレの恩恵を受けるということです。
３，金は一般庶民が出来る最善のインフレヘッジ
では、一般庶民がインフレから少しでも逃れる為にはどうすればいいでしょうか？
不動産は高価すぎるので、一般庶民には手が届きません、となると株や債券、そして金や銀です。
しかし、株や債券はインフレ要素だけでなく、企業収益や全体の景気を把握しなければならず、ボラティリティも高いです。
先日はブラックマンデー超えの大暴落が発生したように、インフレ的な相場であっても株や債券は急落する可能性があります。
→日本株の暴落後の急上昇はデッドキャットバウンス？一時的に日本株が上昇する(かも)しれない理由。
金や銀などのコモディティに関しても、急落することはもちろんありますが、企業収益や全体の景気動向を把握する必要がある、株や債券などよりは安定性が高いです。
実際過去のリーマンショック等でも、株価と一緒に金も下落してますが、株価よりも下落率は低かったです。
リーマンショックの相場のS＆P500のチャート。
2007年の高値が1560ドルで2009年3月が底値680ドル。880ドル下落し、下落率は約56%です。
金価格は高値1000ドルから底値が720ドル。280ドルの下落で下落率は約28％。
→過去の金融危機で金、銀も大暴落した？S&P500と下落率を比較した結果・・・
その後の回復も金の方が速いです。つまり、インフレヘッジには金が最適だというとことです。
銀に関しては、インフレヘッジ面と工業需要があるので、景気後退期には大きく下落しますが、現在の銀価格があまりにも安いので、高騰する可能性はあります。
→【2024年版】銀が600ドル(20倍～)を超えるのか？8つの根拠を解説。
まとめ 金の推奨で詐欺は無理では？
「金は高い」と言う人もいますが、最低1gから購入可能です。
少量だと割高にはなりますが、紙幣の価値が下がり続けるのを指を咥えて待っているよりは良いです。
腐ることもなく、壊れることもなく、保管場所もさほど必要ないです。不動産と違って固定資産税などもかかりません。難しい全体の景気動向や、企業収益など調査する手間もありません。
つまり、一般庶民のインフレヘッジとして非常に有効な資産です。
果たして勝手に価値が減らされていく通貨と、どちらが詐欺的でしょうか？
そもそも、金の現物で詐欺を働くには「金を市場価格より高く売りつける」「偽物を売りつける」くらいしかない気がします。
そして、それを実行するにはお金を下ろさる→指定した場所で購入させる必要があり、難易度は極めて高いと思います。
逆に市場よりも高い価格だったり、指定された店で強引に購入させる手口であれば、それは詐欺の可能性はあります。
ただこういった詐欺もあるのかもしれませんが、
「お金を引き出して「守る」ために金の延べ棒を買うように言う人は詐欺師です。」
これは無理があると思います。
→デビッド・ハンター「50bpsの利下げで株価下落はナンセンス」ドットコムバブル崩壊時との相違点と当時の金相場は？
→債権王ガンドラック氏「人々を金やビットコインに駆り立てるのは”終わりのない債務システム”のせいである」
→なぜ過去の50bps利下げで金銀価格は暴騰したのか？ドットコムバブル,リーマンショック時と現在の相場を比較。
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